一般社団法人火薬学会

Japan Explosives Society

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学会活動

2023年度火薬学会賞

技術賞 小倉 俊幸 君,内田 亘紀 君,柳 直斗 君,田中 健司 君
「発破の自動化に向けた無線起爆システムの改良」

 小倉俊幸君らは,無線通信技術により結線作業を不要にしたトンネル発破用無線電子雷管「ウインデット®Ⅱシステム」を開発し,その有効性を鉱山の坑道発破試験で実証した。これらの研究成果を新技術紹介としてExplosion誌に発表している。
 発破によるトンネル掘削作業は危険性が高く,過去から様々な安全化が進められてきた。含水爆薬や耐静電気雷管,非電気式雷管の導入といった火薬類自体の安全化を経て,爆薬装填時の切羽近接作業を回避する爆薬装填機が開発され普及が始まっている。しかし,雷管の結線作業は依然として切羽に密着して行わねばならず,無線雷管の実用化による解決が期待されている。近年では,労働環境の変化や人口減少による作業者不足への対応も要求され,作業の機械化・自動化による労働力の削減と効率化も求められている。
 そこで,小倉俊幸君らは先に開発されたウインデット®システムを改良し,ウインデット®Ⅱシステムを開発した。充電を行う電磁誘導方式の小型充電器の採用,全ての機器のワイヤレス化により,設置しやすいことが特長である。また,発破器と無線雷管の間の通信に中継器を介在させ,発破器と無線雷管の間の双方向通信を可能にする独創的なシステムを構築している。通信の障害になる電気的ノイズや無線通信信号への対応や,誤動作や不正操作が起こらない工夫を施すなど安全面も考慮し,鉱山の坑道で実証試験を積み重ね,発破試験で実用性を確認している。
 無線雷管はトンネル発破作業の安全化と効率化の飛躍的な向上を可能にするキー技術の一つであり,その実現によって建設業界と火薬業界の発展に大きく寄与することが期待される。
 よって,火薬学会技術賞に値するものであり,今後も研究が継続,発展することを期待したい。

推薦論文

  1. 小倉俊幸, 内田亘紀, 柳 直斗, 田中健司, 無線電子雷管ウインデット®Ⅱシステムの開発, EXPLOSION Vol. 33, No. 3, pp. 175-178 (2023)

小倉 俊幸 略歴

1996年3月 立教大学理学部物理学科 卒業
1998年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科材料科学専攻 博士前期課程修了
2001年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻 博士後期課程修了(博士(理学))
2001年4月 東京工業大学応用セラミックス研究所 博士研究員
2002年4月 日本油脂株式会社(現 日油株式会社) 入社
武豊工場研究開発部開発グループ(現 EXグループ) 配属

内田 亘紀 略歴

2012年3月 名古屋大学農学部応用生命科学科 卒業
2014年3月 名古屋大学大学院生命農学研究科 修士課程 修了
2014年4月 日油株式会社 入社
武豊工場研究開発部EXグループ 配属

柳 直斗 略歴

2016年3月 山口大学工学部電気電子工学科 卒業
2018年3月 山口大学大学院創成科学研究科 修士課程 修了
2018年4月 日油株式会社 入社
武豊工場研究開発部EXグループ 配属

田中 健司 略歴

1995年3月 北見工業大学工学部環境工学科 卒業
1997年3月 北見工業大学大学院工学研究科化学環境工学専攻 修士課程 修了
1997年4月 日本油脂株式会社(現 日油株式会社)入社
武豊工場研究開発部開発1グループ 配属
2016年3月 北海道日油株式会社
2021年3月 日油株式会社 武豊工場研究開発部EXグループ

技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。