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ご挨拶

社団法人火薬学会会長 越 光男

 この度、火薬学会の会長を拝命いたしました。火薬学会は1939年の設立で来年70周年を迎える伝統ある学会であり、私のような化学反応を専門とするものが会長という重責を果たせるのかどうか、はなはだ心配ではありますが、諸先輩や会員諸氏のご協力とご鞭撻を得て精一杯がんばりたいと思っております。

 火薬学会は他の学会と比べてきわめて特徴のある学会です。まず、世界的に見ても火薬を専門とする学会は多くはありません。諸先輩(特に田村元会長、小川前会長、藤原前国際化対応委員長)のご努力により定期的な国際シンポジウム(ISEM)開催も軌道に乗り、本会の国際的な評価は高まりつつあります。また火薬学会誌は企画委員会および編集委員会委員諸氏の献身的なご努力によりインパクトファクターの算定対象になり、またオンライン化されました。これにより海外からの論文請求も増加しつつあり、ますます国際化が進展しています。

 火薬学会のもうひとつの特徴として、業界と深く結びついていてその支援により成り立っているということが挙げられます。現在多くの学会が会員数の減少に悩まされているにもかかわらず、火薬学会の会員数はわずかには減っているものの、ほぼ一定数(約850名)を保っています。これは会員の多くが火薬業界の方々であるということに拠っています。

 こうした事実を見ると火薬学会は安定しているかのように見えますが、学会をめぐる状況は極めて厳しく、むしろ我々は存亡の危機に直面していると言うべきです。まず学会員ですが若い会員の入会が減っていますし、学の基盤を担う大学、研究所の研究者が減少しています。また火薬の需要量も年々減少しつつあるようです。このような状況下で業界の再編も進行しているようですが、たとえば年会における企業からの発表はここ数年激減しています。

 20世紀は右肩上がりの時代でした。科学技術が急速に進歩し大量生産、大量消費がなされました。一部の人(たとえばR.ステント「進歩の終焉」)を除けば「進歩」という概念に疑問がもたれることはありませんでした。火薬の高エネルギー源というイメージはまさにこうした進歩の時代にはぴったりで、火薬学、火薬業界は大いに発展してきたわけです。そして20世紀における「進歩」の結果、相対的に地球は小さくなり、地球資源が有限であるという当たり前のことを強く意識しなければならなくなりました。これからの21世紀は従って右肩下がりの時代です。枯渇するエネルギー資源をどうするのか、悪化しつつある地球環境問題、特にCO2問題をどうするのか、多くの問題があります。これからのキーワードは、循環型・持続可能な社会です。こうした消極的な21世紀のキーワードに対して20世紀型イメージの強い火薬をどのように展開していくのか、循環型社会と火薬をどのように適合させるのか、といったことを考えなければなりません。

 火薬業界はさまざまな意味で火薬学会の基盤です。この基盤としての火薬業界の活性化に、学会としても何らかの貢献ができればと思っています。しかしながらもちろん特効薬があるはずもなく、火薬の需要を伸ばす新しい展開を図ることは現在の状況では至難の業です。

 火薬業界の活性化が学会の活性化にもつながるという信念の基に、火薬工業会と共同で「将来構想委員会」を立ち上げることを提案し、快く受け入れていただきました。火薬の前途は決して明るくなく前途多難が予想されますが、今こそ業界と学会がともに真摯に努力すべきときであると思います。皆様のご協力・ご支援をよろしくお願い申し上げます。

(2008年7月)

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