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2021年度火薬学会賞

論文賞
水書 稔治 君

「デトネーション駆動による爆風模擬と爆風効果の4次元可視化計測」

 水書稔治君は,衝撃波および爆風による構造物および生体組織への影響研究を,高速力学的観点から展開している。これまで,衝撃波管およびデトネーション管による爆風模擬手法,構造物に対する過剰圧や変形の先進的計測法,およびそれらに対する数値解析法の進展に取り組んできた。その中で,爆傷研究の工学的観点での基盤的実験装置として,キログラム級薬量の火薬の点爆発で発生する爆風が持つ流体力学的特性を再現性よく模擬できるデトネーション駆動型ブラストシミュレータを提案し,実現した。さらに,点計測が主流である爆風の過剰圧および構造物の変形計測を全視野的かつ定量的な計測に発展させるべく,高速度背景型シュリーレン法(H-BOS法)の確立,爆風対応型感圧塗料(B-PSP)の開発,およびデジタル画像相関法(DIC法)の適用で,マイクロ秒単位の時間分解能とサブミリメートル単位の空間分解能を有する爆風の機械的作用の4次元可視化計測法を実現させた。
 これらの研究成果は,媒質中を伝播する衝撃波が構造物および生体組織に与える高速力学的効果の解明に広く貢献するとともに,爆発安全研究にとどまらず,流体科学,材料科学,および医工学の実験手法として,大きな発展性がある。また,最先端の研究成果で,学術的にも火薬学会に大きく貢献するものであり,火薬学会論文賞に値するものである。

推薦論文

  1. Four-dimensional visualization of blast loading inside a detonation-driven shock tube using improved pressure-sensitive paint and digital image correlation, Sci. Technol. Energ. Mater., Vol. 82, No. 4, pp. 95-102 (2020)
  2. Fundamental study on blast simulator for blast injury research, Sci. Technol. Energ. Mater., Vol. 81, No. 1, pp. 17-20 (2020)
  3. Quantitative flow visualization of a blast wave from an underground magazine model using background-oriented schlieren, Sci. Technol. Energ. Mater., Vol. 81, No. 5, pp. 128-136 (2020)

略歴

1966年9月 東京都生まれ,埼玉県育ち
1991年3月 東京理科大学 理工学部物理学科・卒業
1991年4月 動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)研究員
2001年3月 東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻博士課程・修了
2002年4月 防衛庁技術研究本部(現・防衛省防衛装備庁)研究職技官
2006年4月 東海大学工学部 航空宇宙学科 助教授
2011年4月 教授に昇任
2013年4月 NASA ラングレー研究センター 客員教授
2020年1月 AIAA(米国航空宇宙学会)Associate Fellow

論文賞は,火薬関係科学又は技術に関し,顕著な論文を論文誌に発表した社員に授与しています。

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