火薬学会HOME

2019年度火薬学会賞

技術賞  富山 昇吾 君

「エアロゾル消火装置の開発及び新規分野への展開」

 富山昇吾君らは,有機カルボン酸カリウムが火災時に発生する燃焼ラジカルを有効に捕捉して,火災を効果的に消火できることを理論的および実験的に検証し,これを利用した新たなエアロゾル消火装置を開発した。これらの研究成果を研究論文としてScience and Technology of Energetic Materials 誌に発表している。
 古くから硝酸カリウムは,カリウムラジカルの発生源として知られ,これを利用した消火装置は実用化されている。しかしながら,硝酸カリウムはカリウムラジカル発生に大きな解離エネルギーを必要とするため,ニトロセルロース等の火薬類を用いる必要があった。
 そこで富山昇吾君らは,より効率的なカリウムラジカル発生源を探索するため,カリウム組成物のカリウムラジカル解離エネルギーを分子軌道法により求め,この値と組成物コストを勘案してクエン酸三カリウムが最も有望であることを見出した。さらにこの結果を実験により確認した。
 これらの成果をもとに新たなエアロゾル消火装置が開発され,既に市販されている。引き続き活発な研究が行われており,電源を必要としないものが既に開発され,電気自動車および燃料電池車向けの装置も実用化に向けて検討が行われている。
 今回の開発には,プロペラント技術が大きく貢献しており,このことは,火薬学の新たな発展を期待させるものである。筆者もエアバッグインフレーターに続く自動車安全部品への成長の可能性を示唆している。
 よって,火薬学会技術賞に値するものであり,今後も研究が継続,発展することを期待したい。

推薦論文

  1. Shogo Tomiyama, Yuki Takatsuka, Akimasa Tsutsumi, Wataru Kobayashi, Tatsuki Endo, Mizuki Azuma, Shotaro Tomiyoshi, and Akimitsu Kikkawa, The study of new aerozol generator of extinguisher, Vol.80, No.6, pp207─211(2019)

略歴

1989年3月 関西大学工学部応用科学科 卒業
1991年3月 関西大学工学研究科応用化学専攻博士課程前期課程 修了
1991年4月 ダイセル化学工業株式会社(現株式会社ダイセル)入社
2016年1月 ヤマトプロテック株式会社 入社
2020年1月 ヤマトプロテック株式会社 技術本部中央研究所所長
  現在に至る

技術賞は,火薬関係技術の進歩に貢献し,成果を会誌又は論文誌に発表した社員に授与しています。

© Copyright 1999-2015 Japan Explosives Society. All right reserved.