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2004年度火薬学会賞-奨励賞

加藤 勝美 君

「ニトロセルロースの自然発火に関する研究」

 ニトロセルロースは、ダイナマイトの基剤、無煙火薬の主成分、あるいはラッカーの基剤としても利用される非常に有用な物質である。しかし、硝酸エステル類は自然分解の傾向があり、ひとたび管理・貯蔵法を誤れば自然発火し大きな事故・災害につながってしまう。ニトロセルロースの詳細な自然分解機構を解明することは、保安確保の視点から非常に重要な課題である。

 加藤勝美君の研究では、FT−IRスペクトル及びC−80による熱分析手法により、ニトロセルロースの自然分解に及ぼす貯蔵雰囲気(二酸化窒素、一酸化窒素、酸素、窒素、空気)の単独の影響を評価すると共に、それらの組合わせ(二酸化窒素/空気、窒素/水、空気/水)による効果を確認している。その結果、実際の貯蔵雰囲気における分解初期の段階では酸素の寄与が大きく、また空気/水雰囲気中では、60℃という比較的低温でも分解が促進されることが判明した。これらの結果から、自動酸化反応によりニトロセルロースの自然分解を説明できる可能性が示唆されている。

 以上の研究は、ニトロセルロースの自然分解による事故・災害を防止するために極めて重要であり、今後の研究の展開が大きく期待される。よって、奨励賞に値するものと認められる。

推薦論文
「Study on the spontaneous ignition of cellulose nitrate Effect of the type of storage atmosphere (I)」
―Sci. and Tech. Energetic Materials, Vol.64, No.6, 236 (2003)

「Study on the spontaneous ignition of cellulose nitrate Effect of the type of storage atmosphere (II)」
―Sci. and Tech. Energetic Materials, Vol.65, No.3, 77 (2004)

略歴
2002年3月東洋大学大学院工学研究科博士前期課程修了
2005年3月東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程終了
2005年4月独立行政法人 産業技術総合研究所 特別研究員 現在に至る

奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。

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