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1999年度火薬学会賞-奨励賞 1

大野芳生君 「非経験的分子軌道法によるテトラゾール類の物性・熱安定性の評価」

 近年のソフト・ハード両面における計算機技術の進歩により,非経験的分子軌道法計算が極めて手軽に出来るようになってきた。このような量子化学計算手法はエネルギー物質の物性・熱安定性・反応性の評価のために有効であり,特に米国においては既に多くの研究例がある。しかしながら我が国においては火薬学の分野では比較的研究例が少ない。

 大野芳生君の研究では,熱安定性の高いテトラゾール誘導体を設計するために非経験的分子軌道法計算をおこない,熱分解初期過程を検討している。例えばアルキル置換テトラゾールについて,環開裂の反応機構を遷移状態の計算結果から推定し,環の電荷密度,π電子密度などと熱安定性の関係を明らかにしている。これらの知見から,熱安定性が高く,窒素含有率の高いテトラゾール誘導体を提案している。

 量子化学計算手法は火薬学の発展のために今後,ますます重要になることが予想されるが,大野君の研究はこうした手法を用いた研究の先導的な例であり,奨励賞に値するものである。

推薦論文

「1HテトラゾールのX線結晶構造解析と分子軌道計算」
火薬学会誌,Vo1.60,No.1,1(1999)

「非経験的分子軌道法による1-Ph-1Hテトラゾール誘導体の熱安定性評価に関する研究」
火薬学会誌,Vol.60,No.3,110(1999)

「アルキル置換テトラゾール類の熱安定性予測」
火薬学会誌,Vol.60,No.5,212(1999)

略歴

大野芳生
1971年9月27日生 28才

1990年4月 東京大学教養学部理科I類入学
1994年3月 東京大学工学部反応化学科卒業
1994年4月 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程入学
1996年3月 同修了
1996年4月 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程進学
1999年3月 同修了
1999年4月 日本油脂株式会社愛知事業所武豊工場入社
      現在に至る

奨励賞は,火薬関係科学又は技術に著しく貢献し, 成果を会誌又は論文誌に発表した若手社員に授与しています。

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