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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

株式会社GSユアサテクノロジー京都事業所見学記

カヤク・ジャパン株式会社 大石淳三

1.はじめに
 2011年10月21日(金)に火工品専門部会と爆発安全専門部会の合同で 株式会社GSユアサテクノロジー京都事業所を見学する機会を得たので報告する。

2.GSユアサの歴史と株式会社GSユアサテクノロジー京都事業所について
 株式会社GSユアサテクノロジーは株式会社GSユアサの七つある子会社の一つである。 その株式会社GSユアサの経営戦略を策定・統括するのが株式会社GSユアサコーポレーションで, 2004年に日本電池株式会社と株式会社ユアサコーポレーションの経営統合により設立された。
 両会社の歴史は古い。日本電池株式会社は1895年に島津源蔵が日本で初めて鉛蓄電池を製造したのが創業で, その後1917年に設立された。一方,株式会社ユアサコーポレーションは 1913年に初代湯浅七左衛門が金属の電解化学に関する研究を開始したことが始まりで, その後,1918年に湯浅蓄電池製造株式会社の名称で設立された。
 今回見学した株式会社GSユアサテクノロジー京都事業所は京都市南区にあり, JR京都線の西大路駅から徒歩約10分の場所にある。 京都事業所では大型リチウムイオン電池,特殊電池を主要製品として取り扱っている。

3.株式会社GSユアサテクノロジー京都事業所の主要製品について
 株式会社GSユアサテクノロジーの経営理念は「無限の可能性を追求した最高性能・ 最高品質の電池電源を提供し,お客様の満足と信頼をうる。」である。そして, 同社は「深海から宇宙まで」をモットーに厳しい環境下で高機能を発揮する電池・ 電源に特化して,その無限の可能性に挑戦されている。
 製品は宙(そら)陸海に使われ, いずれも厳しい環境下で高機能を発揮する技術が認められた大型リチウムイオン電池が使用されている。 その使用実績は次の通りである。


写真1 大型リチウムイオン電池

〈宙の製品として〉
 H−UAロケット用,2006年1月24日に打ち上げられた8号機より搭載。
 人工衛星用,高度約1000kmの低軌道衛星及び高度約36000kmの静止軌道衛星に搭載。
 1999年より量産を開始し,2001年には寿命予測を発表,7年間に渡る実験データを元に寿命予測の精度を検証。
 宇宙貨物輸送機Cygnasの電源としても2010年に採用。
 航空機用,高度10km以上の過酷な環境下で使用されるため軽量かつ高い信頼性の要求に応え ボーイング787の緊急時フライト機器バックアップ電源及び補助動力ユニット始動に使用。
〈陸の製品として〉
 産業用,電気自動車,ハイブリッド車及び鉄道の蓄電池駆動車システムに搭載。
〈海の製品として〉
 深海調査船用として海洋資源探索のための有人潜水調査船 「しんかい6500」の主電源に深海6500mの水圧に耐えるものを搭載。
〈その他として〉
 港湾用トランスファークレーンのハイブリッド電源装置にも活用されている。 これは,コンテナの巻き下げ減速時に発生するエネルギーを高出力で繰り返し充電可能な リチウムイオン電池モジュールに蓄積し,巻き上げ作業を効率良くアシストするものである。 エンジン最大出力を約3分の1まで抑制し,黒煙排出量の低減効果を発揮する。

 また,特殊電池の使用実績は次の通りである。
〈宙の製品として〉
 熱電池,H−UAロケットSRB-A駆動用電池に使用。
〈海の製品として〉
 海水電池,通常は起動せず,海水に浸漬させることにより起動。海難救助機器用電源, 水中ロボット,水中航走体用電源,ラジオブイ用電源,海洋調査,観測機器用電源に使用。
 大容量リチウム1次電池,海洋気象ブイ,観測ブイ,海底地震計測器に使用。(山頂観測器にも使用)
 その他,海上自衛隊向けの大容量鉛蓄電池は, 自衛隊基地のある舞鶴港の近くの福知山市・長田野事業所で製造されている。


写真2 熱電池

4.見学会の概要
 特殊電池技術部の高塚部長にお世話になり次の様な見学内容であった。
〈会社概要の説明〉
 GSユアサの歴史,京都の歴史,組織体制,取扱商品。
〈熱電池について〉
 優れた保存性能,高出力密度,広温度範囲で使用可能,熱電池の作動原理, 熱電池の構造,米国でのリチウム電池の安全性試験の取り組み例。
〈リチウムイオン電池について〉
 構造,性能,製品について。
〈工場見学〉
 製造工程と性能評価室を見学した。
〈博物館見学〉
 様々な製品の紹介と説明を受けた。
 自動車・オートバイ用電池,産業用電池,電動車両用電池,電源システム, 小型電源・充電器などの特機事業,照明機器,紫外線応用機器。
 特に照明機器ではセラミックメタルハライドランプはイカ釣り漁船に搭載され, の照明効果によってイカが大量に釣れるというお話は印象的であった。

5.終わりに
 今後,大きく需要が見込まれると予想される電池の製造会社の最先端技術を 見学させて頂いたことは非常に有意義でした。
 特殊電池技術部の高塚部長ならびに見学にご尽力頂いた皆様に深く感謝申し上げます。


写真3 見学会参加者記念写真

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