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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

高速増殖原型炉もんじゅ 見学記

産業技術総合研究所 和田祐典

1.はじめに
 平成21年12月9日(水)に爆発安全専門部会の見学会として, (独)日本原子力研究開発機構高速増殖炉研究開発センター 高速増殖原型炉もんじゅを見学する機会を得た。以下に,その概要を報告する。

2.高速増殖炉もんじゅについて
 もんじゅは福井県敦賀市にある(独)日本原子力研究開発機構 高速増殖炉研究開発センターの研究用高速増殖原型炉である。高速増殖炉とは, プルトニウム239燃料の核分裂により生成する熱を取り出して発電に利用すると同時に, 生成する中性子線をウラン238に照射する事により,プルトニウム239を再生成する原子炉で, 燃料として消費されるよりも多くプルトニウム239を生成可能である事から増殖炉と呼ばれる。 自然界に存在するウランの99.3%は核燃料としては使用不可能なウラン238である事から, このウラン238を利用可能なプルトニウム239に変換する高速増殖炉の技術は, 原子力エネルギー資源確保の観点から非常に有益な技術であると言える。
 もんじゅは敦賀市街地からおよそ20km北の若狭湾に面した敦賀半島の北端に位置している。 周囲には日本原子力発電敦賀発電所,関西電力美浜発電所があり,原子力発電関連施設が集中している。
 もんじゅは昭和43年に高速増殖炉「常陽」の後継として予備設計が開始され, 昭和60年に着工,平成3年に機器据付けが完了し,試運転を開始している。 翌平成4 年より性能試験が開始され,平成6年に初臨界,翌平成7年には初発電を実現しているが, 同年,ナトリウム漏洩事故が発生し,運転試験を中止している。

3.見学会の概要
1)高速増殖炉もんじゅ概要説明
 まず始めに,もんじゅに隣接するFBRサイクル総合研修施設の情報棟「エムシースクエア」において, もんじゅの概要説明とナトリウム漏洩事故と対応改造工事についての説明等が行われた。 最初に1階ホールにて,3D映像によるもんじゅ概要,高速増殖炉の概要説明を視聴した。 2階情報コーナーにおいては,ナトリウム漏洩事故および対応改造工事に関する展示を見学した。 こちらのコーナーでは事故の原因となった2次ナトリウム系温度計の実物,模型, 並びに改良後の温度計模型を閲覧出来る。1階展示コーナーでは, もんじゅ炉心部における燃料ペレット入れ替え手順を模型を用いて分かり易く説明して頂いた。 また,このコーナーではもんじゅに用いられている冷却系主配管のサンプルも見学出来る。

写真1 炉心部断面模型

写真2 2次ナトリウム系温度計模型
 次いで,同FBRサイクル総合研修施設内のナトリウム取扱研修棟に移動し, 液体金属ナトリウムの流れる様子を見学,包丁を用いた金属ナトリウム片切断の体験, 並びに空気存在下における金属ナトリウムの着火燃焼実験の見学を行った。 金属ナトリウムはプルトニウム核分裂反応による生成熱を熱交換器から蒸気発生器に導く冷却材流体として用いられるが, 反応性の高さ故に取扱には細心の注意が必要となる。

写真3 金属ナトリウム燃焼実験の様子

写真4 燃焼消火訓練設備
2)高速増殖原型炉もんじゅ見学
 もんじゅはFBRサイクル総合研修施設から山を1つ隔てた東側に位置し, バスにより長いトンネルを抜けて訪れることになる。もんじゅは三方向を山に, 一方向を海に面した敷地に立地している。
 敷地南側の高台に設けられた展望施設より,もんじゅの全景を見学後,施設内部の見学へと移行した。 炉心上部の格納容器内等は特別区域となるため,指定の防護衣服と被ばく線量計の着用が義務づけられている。 また,電子ID器具とパスワード認証を用いたゲートにより,関係者の入退場は厳しく管理されている。防護衣服着用後, 厳重な二重扉により隔てられた先の半球ドーム型の空間が格納容器内の炉心の真上に位置するスペースとなっている。 閑散とした空間ではあるが,運転時にはその真下にプルトニウム燃料集合体が格納されることを想像すると, 一種独特の雰囲気を感じる事が出来る。

4.おわりに
 前述の通り,平成7年12月のナトリウム漏洩事故以来,もんじゅは運転停止状態にあるが, 本稿を執筆中の平成22年2月22日には,奇しくも内閣府原子力安全委員会による運転再開容認の判断が下された。 実に14年振りとなる運転再開に向けて,大きな推進力となることと思われる。今後,重大な事故を繰り返さず, もんじゅが先進技術開発に貢献する役割を大きく担う事を期待せずにはいられない。
 今回の見学会に際し,総合的なコーディネートを担当して頂き,ご尽力頂いた (独)日本原子力研究開発機構安全研究センター高経年化評価保全技術研究グループの榊原安英研究主席に深謝致します。
 尚,本見学会の参加者は,新井(東京大学),小倉(中国化薬),加藤(日本工機),中山,和田(有), 岡田(産総研),栗原(火薬工業会)の各氏,および和田(祐)の8名であった。


写真5 今回の見学会に参加したメンバー

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