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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

苅田無害化施設見学記

中国化薬(株) 小倉将隆

1.はじめに
 爆発安全専門部会において、(株)神戸製鋼所苅田無害化処理施設を、 2007年10月に見学する機会を得ましたので、ご報告致します。

2.見学会の概要
1)無害化処理施設建設の背景
 旧帝国陸軍の戦闘機基地として開港した曽根飛行場(現在の北九州市小倉南区)には、 終戦後多数の化学兵器弾(きい弾・あか弾)が有り、 これらは苅田港の神ノ島(こうのしま)周辺に遺棄された。 周辺航路の安全確保の為、これらの遺棄弾を回収・無害化する施設を、 (株)神戸製鋼所が平成16年に建設した。
 

2)苅田港周辺無害化処理計画
 平成16年に第一期(57発)の処理作業がスタートし、今回見学できた作業は、 第四期(予定700発)となり、平成19年10月までで約1400発を処理している。 第四期の処理作業は、平成20年3月の工期で進められている。
 神ノ島周辺には、磁気探査で確認できている金属体が多数有り、 1体ずつ堆積している泥を取り除き確認をしている。もし、信管が付いている弾であれば、 自衛隊に取り扱いを依頼することになっている。 現在までのところ、信管付きの弾は発見されていない。

3)無害化処理作業の工程
 海底では、高精度の磁気探査装置で金属物を探査し、 現し作業により化学弾であることの確認と、水中X線装置で信管の有無を確認する。 確認済みの化学弾は二重容器に格納して揚収される。陸揚げ後に処理施設に輸送され、 X線検査装置できい弾、あか弾の判別を行い一時保管する。 次に爆破処理の前作業を行った後、 神戸製鋼所で製作した高性能真空容器である制御爆破処理装置 「DAVINCH(ダビンチ)」で爆破処理を行う。 爆破処理時に発生する破片類や発生ガスは、装置外部に出ないように工夫がしてあり、 爆破処理は、あか弾の場合、3発/回で、2回/日(合計6発/日)実施されている。 爆破時の騒音は、約30m離れた事務所で約75dBと低く、 消音対策が十分効果を発揮している。
 爆破処理後に出た破片類は、加熱処理後に有害物有無の分析を行った後に、 特別管理 産業廃棄物として廃棄されている。
 各施設はシェルターと呼ばれ、樹脂製のテント布で覆われ、内部を少し減圧状態にして、 有害ガスがシェルター外に漏れ出さないようにしてある。 又、爆発チャンバー内の有害ガス及び各シェルター内の有害ガス(万が一のガス漏れ)は、 活性炭の入ったフィルター装置で、有害ガスを吸着するようになっている。
 有害ガスの検知は特殊な分析機器で24時間モニタリングされ、 監視が厳重に行われている。
 化学弾を入れた容器から出てくる海水及び土壌は、 専用の分析機器で異常の無いことを確認し、又、工場から出る廃水も一旦容器に溜め、 分析後異常が無いことを確認できた後に特別管理産業廃棄物として、 処理施設外に搬出している。
 各シェルター内に入る作業者は、 作業に合わせて4タイプの防護具を着て作業を行っている。 防護具を着ての作業可能は1時間を目安としているとの事。

4)きい弾の概要
 イペリットとルイサイトが含まれている。これにはびらん性の毒性があり、 皮膚に触れると水泡が現れる。吸引すると死に至る。

50kgきい弾

5)あか弾の概要
 ジフェニルシアノアルシンとジフェニルクロルアルシンが含まれている。 これを吸い込むと激しいくしゃみに襲われ、一時行動不能となる。

15kgあか弾

6)廃棄技術のリスク評価方法
 リスク解析は、ベルギー国防省方式を採用しており、 リスクを定量化することにより許容範囲を点数化している。 各ハザードの点数が20点以下になるように設備の自動化を推進している。 化学弾の取り扱い作業は、作業性上、人手に頼る部分が多いが、 今後、自動化できないか検討中とのことであった。

7)管理区域
 施設周辺に対する管理区域は、半径200mを危険区域、 半径400mを立入制限区域と定め、米国が認定している基準値 (マスク無しで8時間吸入が許容される化学剤の濃度)0.0004mg/m3に対して、 200m地点では0.0004mg/m3以下、 400m地点では0.0002mg/m3以下を想定しているとのことであった。

3.おわりに
 今回の見学で、遺棄化学弾の処理作業を安全に、安心して作業ができるよう、 施設の細部に亘って配慮がなされていることに感心しました。 ベルギーにも遺棄化学弾が多数有るということで、 「DAVINCH」を輸出し既に建設されており、 日本の優れた技術が、海外でも活躍する様になっている。
 最後に、今回お世話になった株式会社神戸製鋼所 苅田無害化処理事業所のスタッフの皆様に見学者を代表して、 お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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