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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横浜研究所見学記

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 杉山勇太

1.はじめに
 爆発安全専門部会見学会(2015年3月19日)において、 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)1)横浜研究所に伺ったので、 その概要について報告する。

2.JAMSTEC の概要
 JAMSTEC は海洋や地球物理学の研究開発のために設置された研究所であり、職員は平成26年4月1日において、 研究系、技術系、船員、事務系、支援・補助系の常勤職員を合わせると千人を超えている。 横須賀本部の他に横浜研究所、むつ研究所、高知コア研究所、国際海洋研究情報センター、東京事務所がある。 研究船・探査機を多数所有し、地球深部探査船「ちきゅう」はマントルや巨大地震発生帯への掘削などにより生命の起源、 新しい海底資源、地震発生のしくみなどの解明を目指している。
 横浜研究所では、世界最高性能レベルのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を駆使して地球環境予測、 地球内部ダイナミクスの研究などの研究開発を進めている。地球環境情報に関するデータセンターの役割を担い、 JAMSTEC で得られた研究成果を広く一般に提供している。

3.見学会
3.1 見学者
 見学会の参加者は、次の8名であった(敬称略順不同)。恩田(細谷火工)、加藤(日本工機)、栗原(日本火薬工業会)、 多田(中国化薬)、山口(カヤク・ジャパン)、中山(部会長)、佐分利、杉山(産総研)

3.2 見学の概要
 はじめに横浜研究所にある地球情報館1階映像展示室にてスクリーンを使って研究所概要と見学の順序の説明があった。 その後、シミュレータ棟に移動して地球シミュレータ実機を見学し、 最後に地球情報館に戻って地震・津波観測監視システム「DONET」を説明いただいた。

3.2.1 地球情報館
 地球情報館は JAMSTEC が得たデータ・映像を活用して一般向けに提供している展示施設であり、 こちらの1階にある半球スクリーンにて、高橋様がタブレット端末を操作しながら地球環境汚染物質が風によって移動する様子、 海洋の流れと海洋温度が時期によって大きく変化する様子を丁寧に説明いただいた。
 また、地球深部探査船「ちきゅう」やスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の映像を拝見し、 これまでの技術開発や研究成果の一部を紹介いただいた。特に有人で水深6,500mまで潜ることが出来る有人潜水調査船 「しんかい6500」や、海底の掘削によりマントルへ到達を目指す「ちきゅう」の開発を可能とした要素技術に感銘を受けた。

図1 地球情報館半球スクリーン

3.2.2 スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」
 地球シミュレータは2002年に、地球温暖化を始めとする気候変動の解析・将来予測、地震や地球内部変動の解明などを目指し、 JAMSTEC の横浜研究所内に建設されたシミュレータ棟(50 m×65 m×17 m)に設置された。初代機の理論演算速度40 TFLOPSを誇り、 完成から2年半の間、世界のスーパーコンピュータのTOP500ランキングにおいてNo.12)に認定された。運用開始から7年が経過し、 2009年に新たなシステムに更新され、理論演算速度は131 TFLOPSになった。2015年からその後継機の運用が開始され、 その理論演算速度は1.3 PFLOPSになり初代機に比べて32倍の演算速度を達成した。実際に実機を見学した時は、 システムの更新時期であったために稼動は停止していたが、図2にあるように大きな筐体が並んでいる様子は壮観であった。
 地球シミュレータを使用した研究成果の例をいくつか紹介いただいた。2100年までの世界の年平均気温分布を予測したシミュレーションでは、 北極海付近における温度上昇が顕著であり、将来の日本における海岸線の上昇や気候の変化が心配になる結果であった。 ヒートアイランド現象のメカニズムの解明を目指した結果として、真夏の東京駅付近の気温分布の時間変化を拝見し、 高いビルの影響を紹介いただいた。2011年東北地方太平洋沖地震の地震波伝播シミュレーションでは、 30分足らずで日本から見た地球の反対側に最も速い地震波が到達したという結果を拝見し、 地球全体を計算範囲としたスケールの大きさに感銘を受けた。

図2 スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」

3.2.3 地震・津波観測監視システム「DONET」
 DONET (Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)は南海トラフの地震、 津波を常時観測監視するシステムであり、海底にある観測点が基幹ケーブルにつながれている。 強震計などの様々な計器が設置され、海底の動きを確実に捉えられるようになり、 地震波や津波の到達前にそれらの情報発信を行うことができ、防災・減災に貢献するとの説明をしていただいた。

4.おわりに
 爆発安全専門部会見学会では、JAMSTEC のスーパーコンピュータの見学や研究成果を紹介いただいた。 お忙しい中、本見学会を受け入れていただきましたJAMSTECの関係者の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。 貴重なお時間をいただき、まことにありがとうございました。


図3 集合写真

参考
1) 海洋研究開発機構, http://www.jamstec.go.jp
2) TOP500, TOP 10 Sites for June 2002, http://www.top500.org/lists/2002/06/

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