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爆発安全専門部会/過去の専門部会の記録

三菱マテリアル(株)東谷鉱山見学記

(社)日本煙火協会 検査所 松井 郁水

1.はじめに
 爆発安全専門部会において、三菱マテリアル株式会社東谷鉱山を 平成20年10月8日(水)に見学することができましたので、概要を報告致します。

2.見学会の概要
1)見学者(8名)
 飯田、新井、大森、小倉、栗原、中山、畑中、松井

2)三菱マテリアル株式会社 東谷鉱山ついて
 三菱マテリアル株式会社東谷鉱山(以下、「東谷鉱山」という)は、 福岡県の北東部北九州市小倉南区に位置し、 カルスト台地で有名な平尾台国定公園の隣接地を掘削している。
 東谷鉱山は昭和30年に開発を着工し、翌年の昭和31年にグローリーホール (すり鉢)方式で生産を開始した。昭和42年からベンチカット方式へ移行し、 昭和48年から立坑を利用した送鉱方式を採用して、現在に至っている。
 近年、火薬類取締法が一部改正され、 特定硝酸アンモニウム系爆薬の移動式製造設備が認可されたことを受け、 東谷鉱山においてオリカジャパン(株) による日本で初めての移動式製造設備による爆薬の現場製造・装薬を行うなど、 新しい試みにも積極的に取り組んでいる。

写真1 福岡県広域地図

写真2 東谷鉱山位置図
3)東谷鉱山現況
 切羽面積は約1km2(東京ドーム26個分)の広大な面積を保有し、立坑5本を所有している。 この鉱山では結晶質石灰岩が採掘されており、セメント用、コンクリート骨材用、 鉄鋼精錬用などとして使用されている。全国の採掘量比較では、1位の鳥形山鉱山(高知)、 2位の戸高鉱山(大分)、3位の新津久見鉱山(大分)に続く4位で、 H19年度の年間採掘量は約1100万トンとの報告があった。
 主力立坑の一つでは、石灰岩は処理能力1100トン/Hr のジョークラッシャーで150ミリの大きさまで一次破砕し、 その後インパクトクラッシャーで50ミリの大きさまで細かくする(二次破砕)。 その採掘した石灰岩の約90%は鉱山から約12キロ離れた九州工場へ 3本のベルトコンベアで輸送しているということであった。

4)発破方法
 発破の状況を見学中に拝見することはできなかったが、地元との協定により、 発破は正午から2〜3箇所で順次行なわれている。 1回の発破に使用する爆薬量は最大約4トンで、 一孔約250sの装薬量で最大15孔程度を一度に発破しているとの話であった。

5)採掘現場見学
 説明があった事務所から切羽現場までは、マイクロバスで約15分を要した。 切羽現場では採掘された石灰石をホイールローダー(バケット容量:20m3)ですくい取り、 ダンプトラック(ベッセル容量:150トン)に積み込み、立坑へ落とし込む作業を見学できた。 立坑の手前には、ダンプトラックが落ちないように、鉄製の大きな車止めが設置されていた。 立坑は当初直径5mで掘られていたが、石灰石を落とし込むことによって内面が自然に削られ、 現在では約15mまで拡がっているとの説明があった。

写真3 切羽作業中心部分

写真4 立坑への石灰石投入の様子
6)サイトミキシングトラック(オリカジャパン製)の見学
 発破に使用する爆薬はANFO爆薬を使用し、 サイトミキシングトラックによりANFO爆薬を製造し、直接装薬孔に装填している。 ただし、水穴の発破には、ANFOピース品に重しを付け、ポリエチレン製袋に装填している。
 サイトミキシングトラックは日野自動車製のトラックを一旦、オーストラリアに輸送し、 トラックの荷台を取り外し、サイトミキシング装置(硝酸アンモニウムタンク、ミキサー、 軽油およびオイルレッドの各仕込み装置、仕込み量確認用パソコンなど) を搭載した状態で返送されて、使用しているとのことであった。また、 ここで使用されている硝酸アンモニウムは オーストラリアから輸入されたものであるという説明があった。

3.おわりに
 私にとって、今回の発破現場は、普段目にすることがほとんどない世界で、 見るものすべて新鮮でした。東谷鉱山では日本初の移動式製造設備の導入など 新しい試みにも積極的に取り組まれていることに大変感動いたしました。 また、作業者1人あたりの作業効率を上げるために、具体的数字を算出し、 少しでも作業効率を高めるため、重機の大型化、 送鉱用ベルトコンベアの輸送効率改善にも積極的に取り組まれているということで、 大変感心しました。
 また、東谷鉱山では地元の各地区の代表者の方々にも見学を行い、 地元との共生や自然環境の保全にも積極的に参加されているという報告もあり、 今後の更なる発展を期待したいと思います。
 最後に、今回の見学会で大変お世話になった大内鉱山長 ならびに吉田鉱山一課長補佐に深くお礼を申し上げたいと思います。 ありがとうございました。

写真5 サイトミキシングトラック

写真6 集合写真(ホイールローダー前にて)

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